ギリシャ:5日、国民投票…緊縮策賛否を問う
毎日新聞 2015年07月04日 20時05分(最終更新 07月05日 01時01分)
【アテネ福島良典】財政危機のギリシャで5日、欧州連合(EU)などから金融支援の条件として要求されている緊縮策への賛否を問う国民投票が実施される。結果は欧州におけるギリシャの命運を左右する。預金の引き出し制限や銀行休業などの資本規制で国民生活が逼迫(ひっぱく)する中、親EU派の賛成陣営と、「反緊縮」のチプラス首相に同調する反対派の間で社会は分裂している。地元メディアによると、警察当局は銀行や商店が襲撃される不測の事態に備え、警戒態勢を強化している。
投票時間は5日午前7時(日本時間同日午後1時)から午後7時(同6日午前1時)までで、5日深夜(同早朝)にも大勢が判明する見通し。有権者数は18歳以上の約985万人。4日付ギリシャ各紙の論調は「欧州にイエスを」(トビマ紙)と呼びかける賛成派と、「尊厳を奪われた緊縮策の5年間を覚えている」(エフィメリザ紙)と訴える反対派で割れた。
アテネで3日夜開かれた賛成、反対両陣営の大規模集会でも参加者の意見は真っ向から対立した。賛成派の元教師、ポピ・パンデレオンさん(60)は「ギリシャは民主主義誕生の地。EUがギリシャの居場所だ」と強調。一方、反対派集会で大学生のアンドレアス・ストラトヤニスさん(21)は「緊縮策で貧しい人はますます貧しく、富裕層だけが豊かになった」とEU批判を繰り広げた。
6月29日に導入された資本規制の影響は各方面に広がっている。土産物屋が軒を連ねるアテネの繁華街で民芸品店を営むアラブ系移民のエスハク・メトハクさん(50)は「銀行閉鎖の影響で、ギリシャ人は食料品などの買いだめに走り、ぜいたく品を買わなくなっている」と指摘する。
海外で暮らすギリシャ人にも支障が出ている。アテネの主婦、エバゲリア・パヌリさん(47)はオランダで暮らす長男ディミトリスさん(25)に引っ越し費用を送金できずに頭を抱えている。「銀行は息子をホームレスにしたいのか。ユーロから(ギリシャ旧通貨)ドラクマに戻ったら大変。子どもたちの世代のために投票したい」と語る。
ギリシャ紙カティメリニによると、治安当局は政府の要人や庁舎、大使館、電力施設などの警備強化計画を立案。英紙フィナンシャル・タイムズは、預金流出で資金繰りが緊迫しているギリシャの銀行が、破綻時に備え預金者負担案を検討していると報じたが、ギリシャ銀行協会は否定した。