北朝鮮:サイバー部隊増強 韓国メディア「現体制で倍増」
毎日新聞 2014年12月21日 東京朝刊
【ソウル大貫智子】米国政府がソニーの映画子会社ソニー・ピクチャーズエンタテインメントに対するサイバー攻撃に関与したと認定した北朝鮮は、20年以上前から「ソフトウエア強国」を目指し、サイバーテロ能力を高めてきた。膨大な費用がかかる兵器開発より低コストで高い効果が見込めるからだ。ただ、ラヂオプレスによると、北朝鮮当局がサイバー部隊の存在を明らかにしたことはなく、過去の攻撃の際も「米韓両国によるでっちあげ」と反論してきた。今回はオバマ米大統領が直接言及したことから、強い反発が予想される。
北朝鮮は金正日(キムジョンイル)総書記時代の1990年代から、ITの向上を図ってきた。金正恩(キムジョンウン)第1書記は一層の強化を図り、金第1書記の指示で2012年8月、「戦略サイバー司令部」が新設されたとされる。
韓国メディアによると、韓国軍が把握している北朝鮮のサイバー部隊は約5900人で、金第1書記体制になって倍増。優秀な子どもは年間500時間の「英才教育」を受け、大卒後に朝鮮人民軍偵察総局などに配置される。同局傘下の「電子偵察局」所属のハッカー約500〜1000人が、韓国の軍や政府機関へのサイバー攻撃を担当しているという。
韓国では09年、11年、13年に青瓦台(大統領府)や金融機関、大手メディアなどのサーバーが狙われる大規模なサイバー攻撃が発生。IPアドレスなどから、韓国政府はいずれも北朝鮮の関与を疑ってきた。
手法は、複数のパソコンから大量のデータを一斉送信して、相手のコンピューターを機能不全にしたり、悪性ウイルスを流布したりするもの。13年のサイバー攻撃では、北朝鮮国内にある複数のパソコンが、被害を受けた会社のサーバーに約1500回接続し、約70種類のウイルスを流布した。
ただ、発信源を特定するのは極めて困難で、北朝鮮は毎回関与を否定している。
朝鮮中央通信は7日、「わが方の最高指導者の尊厳を中傷する不純な映画を放映しようとしたのがソニー・ピクチャーズということは知っている。相応の懲罰を受けるべきだ」と映画への不快感を示す一方、「(過去の攻撃と)手法が同じだから『北の仕業』だ、というのは根拠自体がでたらめだ」と反論した。