衆院選:各国の反応は 警戒と歓迎交錯
毎日新聞 2014年12月16日 東京朝刊
日本の衆院選の結果を各国は注視した。
◇中
中国外務省の秦剛(しんごう)報道局長は15日の定例会見で、衆院選の結果について「日本側は歴史の教訓をくみ取り、地域の安全への関心を尊重し、平和、発展、安定のために建設的な作用を発揮することを希望する」と述べ、安倍晋三首相の言動を注視する考えを示した。
中国社会科学院日本研究所の楊伯江(ようはくこう)副所長は毎日新聞に、「投票率の低下や共産党の躍進は、安倍首相や自民党に対する国民の不信感の表れだ。内需が低迷する中、アベノミクスの成功のために隣国との関係改善をどう進めるかが課題だ」と指摘した。
◇韓
韓国紙は15日付朝刊で一斉に1面で報道。「『右傾化マイウェイ』加速化する見通し」(東亜日報)など、安倍首相が憲法改正問題や歴史問題などで保守色を強めることへの警戒感を示した。
ただ、長期政権をにらむ安倍首相が関係改善に乗り出すとの期待もある。韓国外務省関係者は15日、「自公連立政権が安定的政権基盤を土台に正しい歴史認識下で近隣国家との友好、協力関係を発展させることを期待する」と述べた。
◇米
米政府は「日本政府と緊密な同盟協力を深化させていくことを楽しみにしている」(ホワイトハウス)と歓迎した。政権基盤の強化は、日米防衛協力の指針(ガイドライン)の見直しや環太平洋パートナーシップ協定(TPP)交渉など、積み上げてきた協議の加速化につながると見ているからだ。
米国内には安倍政権が保守色を強く打ち出すことへの懸念もある。米ウォール・ストリート・ジャーナル紙(電子版)は「安倍首相の地滑り的勝利」と伝えつつ、農産物の関税撤廃や中韓両国との関係改善など課題が山積していると指摘。「日本が景気後退から抜け出せなければ目標は何一つ実現しない」(アメリカン・エンタープライズ研究所のマイケル・オースリン日本部長)との意見も強い。
◇露
ロシアメディアは「経済政策を問う国民投票だった」などと淡々と伝えた。ウクライナ情勢を巡って欧米の厳しい経済制裁が続く中、日露関係改善に意欲を持つ安倍首相の続投はロシアにとって望ましいからだ。プーチン政権は自公の勝利を歓迎している模様だ。
◇欧
経済停滞でデフレ懸念が強まっている欧州では、安倍政権がデフレ脱却のため進めている「アベノミクス」の成否に高い関心を持ってきた。ただし、日本経済の失速感が強まる中で、当初の期待感は薄れつつあるのが実情だ。欧州域内の経済政策路線にも影響を与えるだけに、選挙後に首相がどこまで大胆な経済政策を推し進めるのかを注視している。
英BBCは「安倍首相は近年の日本の首相で最も強大な力を得たが、問題はそれをどう使うかだ。困難な経済改革でなく、平和憲法の見直しなどに使うとの懸念もある」と指摘した。【北京・工藤哲、ワシントン西田進一郎、ロンドン坂井隆之】