2013年01月23日 産経新聞
「アルジェリア人質事件」について政府は被害者名非公表の方針
アルジェリア人質事件で犠牲になったプラント建設大手「日揮」の日本人7人について、政府は名前など身元に関する情報を公表しないことを明らかにした。テロで邦人に犠牲が出るという重大事件としては、異例の対応となった。
日本人が被害に遭った過去の海外の事件では、ほとんどの場合は政府や被害者が所属する団体などが、被害者の身元を明らかにしている。
平成16年4月、自衛隊撤退を求めるイラクの武装勢力に日本人3人が拘束された事件では、当時の福田康夫官房長官が会見で、3人の名前を公表した。
今回非公表とした理由について、菅義偉(すが・よしひで)官房長官は「ご家族や会社の方々との関係があるので控えさせていただく」と説明した。
一方、日揮の遠藤毅広報・IR部長は22日の記者会見で「政府にもご理解をいただいている」とした上で「今回生き残って帰ってくるスタッフ、残念ながら死亡して遺体となって帰ってくるスタッフ、それから亡くなった人たちにはご遺族がいる。厳しい体験をした本人、ご遺族への配慮を優先させたい。これ以上ストレスやプレッシャーを与えることは会社として避けなければならない」と述べ、社員にも身元を明らかにしないと述べた。今後も公表することはないという。
上智大学の田島泰彦教授(メディア法)は「遺族への配慮は大事だが、被害者がどういう人で、現地でどんな役割をしてきたかを明らかにすることが、テロの全容を解明する上で必要となる」と指摘。「身元が分からなければ、会社や政府の対応に問題がなかったかを検証することもできない。この先もずっと名前を出さないという対応には疑問が残る」と懸念を示す。