"History begins Sumer!"[歴史はシュメール語から始まる。]よく言われる銘言です。歴史上最も古い言語で、紀元前32世紀からシュメール語の楔形文字文献が残されています。古代エジプト語は紀元前30世紀からです。シュメール語はアッカド語というバビロニアの国際語として継承され、キプロスにも文献が残されているほど広まりました。古代エジプト語はコプト語として教会で今でも使われているもので死語ではありません。コプト語にはギリシア語語彙が豊富ですから、古代エジプト語がコプト語を経て継承されたというべきでしょう。さて印欧語は、(1)アナトリア語:小アジアで話されていたものでヒッタイト語を含む7言語で、ヒッタイト語・パラー語・ルウィ語・リュキア語・リュディア語で楔形文字表記です。:(2)インド語で、サンスクリット語群です:ウェーダ語などわが国でも広く親しまれ愛されてきました。:(3)イラン語:古代ぺルシア語・ペルシア古語でこれも広く承継されてきました。:(4)ギリシア語:ギリシア語文献は紀元前8世紀頃からですから、印欧語のなかでは若手です。:(5)イタリック語:ラテン語の系統で、起源はそれほど古く遡れません。昔はロマンス語群とも言っていました。今のイタリア語・フランス語・イスパニア語・ルーマニア語のもとです。:(6)ケルト語:ケルト人の言語で、古くからイギリス・アイルランド・ブルターニュの地に根をおろし、語彙が方言で残存しています。:(7)ゲルマン語:中高ドイツ語など、ゲルマン系の言語で英語はこの系統です。:(8)スラヴ語:今のロシア語のもとで古代教会スラヴ語に代表されます。主としてキリル文字表記です。:(9)バルト語:今のバルト3国の言語です。:(10)トカラ語:発見は1895年です。:1905年に大谷探検隊等が大谷大学に持ちかえり、日本はトカラ語研究の先駆国です。:(11)アルメニア語:アルメニアの母語です。:(12)アルバニア語:アルバニア人の母語で現在も生き続けています。:の12語派で構成されています。
ギリシア語の印欧語における地位は、印欧アナトリア語に劣ります。ある意味でサンスクリット語と同様に文献が豊かで文化的に豊富なもので文献量が格段に多いことから印欧語の基幹言語と「信仰」されてきました。サンスクリットが仏典の基礎であるように、ギリシア語は西欧文明の基礎を築きあげたからでしょう。ですから、古代エジプト語やアッカド語と比肩する地中海の共通語となったのでしょう。聖書がギリシア語とヘブライ語であって、広く信仰とともに広まったのは、ちょうど古代エジプト語が基督教の影響で語彙を採択してギリシア語的な「コプト語」に進化したのと同じです。コプト語文献にギリシア語が多いのも、文化的影響の甚大さからその蓋然性を肯定できます。
最近の参考書:大城光正・吉田和彦著/印欧アナトリア諸語概説-1990 大学書林
Stuber Karin, Zehnder Thomas, Remmer Ulla/ Indogermanische Frauennamen - 2009 Heiderberg :Universiaetsverlag Winter. ISBN 978-3-8253-5600-2
Wodtko S Dagmar, Irslinger Britta, Schneider Carolin /Nomina im Indogermanischen Lexicon - 2008 Heiderberg :Universiaetsverlag Winter. ISBN 978-3-8253-5359-9