EU :ギリシャ支援合意 追加1兆円、債務危機の再燃回避
毎日新聞2017年6月16日 東京夕刊
【ロンドン三沢耕平】欧州連合(EU)は15日(日本時間16日未明)、ルクセンブルクでユーロ圏財務相会合を開き、ギリシャに対し85億ユーロ(約1兆500億円)を追加融資することで合意した。7月に巨額の債務償還の期限が迫っていたが、中断していた金融支援の再開が決まったことで、「ギリシャ危機」の再燃は回避される見通しとなった。
財政難が続くギリシャに対し、ユーロ圏各国は2015年8月に3年間で最大860億ユーロを融資する第3次支援プログラムを決定。しかし、1次、2次支援に参加していた国際通貨基金(IMF)は「ギリシャの債務の持続可能性が判断できない」として参加を見送っていた。これに対し、主要債権国のドイツなどは不満を表明し、第3次支援に基づく融資は昨年10月を最後に中断されていた。
この日の会合では、ギリシャが増税や年金の削減などの緊縮策を実行に移している点が評価され、85億ユーロを2回に分けて融資することでまとまった。ギリシャは7月に72億ユーロの債務を返済する必要があり、この返済や金融機関の資本増強などに充てることになる。
IMFが求めていた債務の軽減策については、ユーロ圏側が返済期間を最大15年延長するなどの案を提示。これを受けて、IMFのラガルド専務理事は支援策への参加を表明したが、実際の融資は債務軽減策の詳細が明らかになってから実施する考えを示した。IMFの融資額は20億ドル(約2200億円)規模になる見通し。
IMFはさらなる債務軽減の具体策を求めているが、ギリシャへの支援に批判的なドイツなどの加盟国の世論に配慮し、具体策の合意は年末まで持ち越される可能性がある。
ギリシャの財政再建には一定の進展がみえるものの、経済のマイナス成長が続いたことで債務残高は国内総生産(GDP)の約1・8倍に膨らんだまま。失業率も20%台とユーロ圏最悪の水準に低迷しており、今回の支援でギリシャ経済が自律的な回復に向かうかは不透明だ。
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