EU:ギリシャ支援合意 改革法制化が条件
毎日新聞 2015年07月13日 21時44分(最終更新 07月14日 04時29分)
ユーロ圏首脳会議後に会見するギリシャのチプラス首相=ブリュッセルで2015年7月13日、AP
【ブリュッセル坂井隆之】欧州連合(EU)は13日、当地で開かれたユーロ圏19カ国の首脳会議で、財政危機に陥っているギリシャが財政改革を確実に実行することを条件に、金融支援交渉を始めることで合意した。合意は全会一致。ギリシャに対して年金や付加価値税(日本の消費税に相当)などの改革法案を15日までに議会で可決し、実行することを要求。EUなど債権団による厳しい監視を受け入れることも義務づけた。支援総額は、3年間で最大約860億ユーロ(約11兆8000億円)に達するとしている。
EUとギリシャ政府は改革案の議決を受けて交渉に入り、詳細な支援の条件と内容を詰める。首脳会議後に公表した声明は、ギリシャの当面の資金繰りを維持するため、今月20日までに70億ユーロ、8月半ばまでにさらに50億ユーロが緊急に必要なことを「留意する」と言及。最終合意が成立するまでのつなぎの資金支援を検討する方針を示した。支援交渉開始に合意したことで、ギリシャの財政破綻とユーロ圏からの離脱は回避される公算が大きくなった。
首脳会議に先立って11〜12日開かれたユーロ圏財務相会合では、チプラス政権が支援の前提条件として9日に提出した財政改革案に対し、「不十分」との意見が続出。実現性についても「信頼できない」(ショイブレ独財務相)と不信の声が相次いだ。このため声明はギリシャに対し、年金や付加価値税の改革に加え、経済指標改ざんを防ぐため統計機関の独立性を確保▽送配電事業の民営化▽銀行の不良債権処理の実施−−などの改革を要求。さらに公的部門の民営化を徹底するため、最大500億ユーロ規模のギリシャの国家資産を外部の官民基金に譲渡する方針も盛り込んだ。改革実行にあたってはEUの欧州委員会、国際通貨基金(IMF)、欧州中央銀行(ECB)で構成する専門家チームとの協議を義務づけ、確実な実行を担保する。
チプラス政権が要請していた公的債務の返済負担を軽減するための債務再編については、声明で「必要であれば検討する準備がある」と言及。財政改革を実行した段階で、対応を検討する方針を示した。ただし「名目の債務額削減は不可能」とも明示し、債務削減に反対するドイツの意向を反映させた。
首脳会議は12日午後から13日朝まで約17時間に及んだ。ドイツは支援交渉が失敗に終わった場合はギリシャが一時的にユーロ圏を離脱する選択肢も提案したが、各国の反対で合意には盛り込まれなかった。
会議後記者会見したドイツのメルケル首相は「今回の合意を実行して、失われた信頼を回復しなければならない」と、ギリシャに改革の着実な実行を求めた。ギリシャのチプラス首相は3年間の支援のほか債務再編が検討される点を成果として挙げ、「最善の結果が得られた」と強調。「これから厳しい選択が待っている。ギリシャには改革が必要だ」と合意を実行する意思を示した。