ソニー映画攻撃:米、北朝鮮の関与認定 オバマ大統領、上映中止「誤り」
毎日新聞 2014年12月20日 東京夕刊
【ワシントン和田浩明、ニューヨーク草野和彦】北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)第1書記の暗殺を題材にしたコメディー映画「ザ・インタビュー」を製作したソニーの映画子会社ソニー・ピクチャーズエンタテインメント(本社・ロサンゼルス)が受けた大規模なサイバー攻撃について、米連邦捜査局(FBI)は19日、「北朝鮮政府に責任があると判断するのに十分な情報を入手した」と発表した。同社は、犯行声明を出したハッカー集団が上映館のテロ攻撃を示唆して封切り中止を決めた。これについてオバマ米大統領は19日の記者会見で、「ソニーは誤りを犯した」と批判した。
オバマ大統領は、ソニー・ピクチャーズが被害に遭い、社員が脅されたことに「同情する」と述べる一方、「独裁者が、米国社会に検閲を強制するのは容認できない」と語った。
また、一旦、妥協姿勢を見せれば、ハッカーの脅迫が記録映画や報道番組まで発展する恐れを指摘、対抗策を取る考えを明らかにした。
米国は、北朝鮮の核兵器や長距離弾道ミサイル開発に加え、今回、サイバー攻撃の脅威も重視する姿勢を打ち出した。米国が対決姿勢を示したことで、核問題をめぐる6カ国協議の再開など、日本に関連する外交課題に影響を与える可能性がある。
AP通信によると、北朝鮮国連代表部のキム・ソン参事官は19日、「(北朝鮮は)関係ない」と述べ、関与を否定した。また、「(映画は)我が国を侮辱している。我々の主権を踏みにじっている」と厳しく非難した。
FBIは、北朝鮮政府のサイバー攻撃への関与を認定した根拠として(1)北朝鮮が過去に使用した攻撃用ソフトウエアと類似のソフトが使われた(2)北朝鮮と関連するIPアドレス(インターネット上の住所)が攻撃ソフトに含まれていた(3)昨年3月に韓国の銀行やメディアを標的にした北朝鮮の攻撃と類似性があった−−を挙げた。
◇ソニー側が反論
ソニー・ピクチャーズのマイケル・リントン最高経営責任者(CEO)は19日、米CNNのインタビューに対し、映画館が上映見送りを決めたことを挙げ、「誤っているのは大統領だ」と反論した。
ソニー・ピクチャーズは、「ザ・インタビュー」をクリスマス休暇に合わせ25日に公開予定だった。だが、「平和の守護神」を名乗るハッカー集団が11月下旬に同社を攻撃。数千台のコンピューターが使用できなくなり、大量の社内文書や個人の情報が盗まれた。
実行犯が映画館に対するテロ攻撃を示唆したため、同社は17日、封切りの中止を発表していた。
米国では今年5月、中国の人民解放軍関係者5人が、サイバー攻撃による知的財産の盗難に関与したとして刑事訴追されている。