脱金融国家、EU迫る キプロスへの支援合意
•キプロスと欧州連合(EU)は25日未明、EUが100億ユーロ(約1兆2300億円)規模の金融支援をすることで合意した。EU側は条件として、大手2銀行を事実上、破綻(はたん)処理し、肥大化した「金融ビジネス」国家からの転換を迫った。ユーロ危機の再燃は、ひとまず封じ込められたが、戸惑いも広がる。
「当初案よりいい解決策になった。10万ユーロ以下の預金者を守り、問題銀行に焦点を当てることで不安定な金融を回復できる」
25日未明、ユーロ圏財政相会合のデイセルブーム議長(オランダ財務相)は記者会見でキプロスとの合意内容をこう評価した。
ユーロ圏財政相会合が今月16日に合意した支援条件は、すべての預金を対象に1回だけ課税するというものだった。
その後、国民や議会の反発を受けたことで、キプロス政府は10万ユーロを超える部分の預金に限って、20%程度の課税をすることを逆提案した。
だが、最終的に合意したのは、ギリシャ国債への投資で傷ついたキプロスの銀行の抜本的な処理だった。
国内2位のライキ銀行を分割し、優良部門のみ大手のキプロス銀行に吸収。
延命されるキプロス銀行も株主だけでなく、10万ユーロ超の大口預金者に損出負担を求め、資本の穴埋めをする計画。
事実上の破綻処理で、大口預金は40%カットされる可能性がある。
国内総生産(GDP)の7倍もの金融資産を集めたキプロスは、租税回避地としてロシアなどから不透明な資金が流れ込み、マネーロンダリングの舞台と看做されてきた。合意には、これに対する対策も盛り込まれた。
EUとキプロスとの主な合意
1.EUと国際通貨基金(IMF)は100億ユーロをキプロスに支援する。
2.経営が悪化した最大手のキプロス銀行と2位のライキ銀行を再編・処理。ライキ銀行は優良部門と不良部門に分けて消滅させる。優良部門をキプイロス銀行が吸収。
3.両行の株主や債券所有者のほか、10万ユーロ超の預金者に損出負担を求める。10万ユーロ以下の預金は全額保護。預金者の負担額などの細かい条件は4月上旬までに決める。
4.キプロスは金融機関の資金洗浄対策のほか、法人税の引き上げ、財政健全化など、構造改革に取り組む。
(朝日新聞2013年3月26日朝刊3頁)