3月破綻回避へ駆け引き ギリシャ再生に不信募る
2012.02.13 共同通信
ギリシャ国会が13日、欧州連合(EU)の求める新たな財政緊縮策を承認し、1300億ユーロ(約13兆円)に上る第2次支援の実施に道が開けた。ユーロ圏財務相会合は15日に承認する可能性が高い。しかし支援の可否をめぐる混迷は、ギリシャに当座の資金を手渡して3月20日に迫った145億ユーロの国債償還のデフォルト(債務不履行)を回避させるための「駆け引きにすぎない」(EU外交筋)との指摘もある。危機が解決に向かう展望は見えず、ギリシャ、EUの相互不信は募る。
▽EUへの憎悪
「ギリシャがユーロ圏にとどまるか、無秩序なデフォルトに陥るかを、皆さんの票が決める。国家崩壊を防ぐことができなければ、歴史はわれわれを許さないだろう」
パパデモス首相の演説が12日深夜、国会内に響いた。国会前広場などでは10万人規模のデモ隊が「緊縮策反対」を大合唱。過激派の若者と警官隊が衝突し、あちこちで放火による火の手が上がった。
ギリシャの失業率は20%を突破、青年層の失業率は48%にまで悪化した。新たな緊縮策は「企業競争力を高め、失業率を減らす」との名目で最低賃金を22%引き下げる。最低賃金は現在の751ユーロから586ユーロとなる。
25歳以下の労働者には32%カットが適応される。国民に困窮化を強いる政策ばかり命じるEUへの憎悪は募るばかりだ。
昨年11月、パパンドレウ前政権の崩壊を受けて発足したパパデモス首相の連立内閣は基盤が揺らぎ始めた。与党の一角、国民正統派運動(LAOS)は反旗を翻し、大臣、副大臣ら6人が辞任した。4月にも実施が見込まれる総選挙では、EU主導の緊縮路線に国民の審判が下る。
▽二枚舌
第2次支援の承認を先送りした今月9日のユーロ圏財務相会合では、年金カットに踏み込まず、与党内の足並みもそろわないギリシャ政府に対し、冷淡な声が相次いだ。同政府はEUや国際通貨基金(IMF)に改革の実施を繰り返し確約しながら、実行を怠ってきた経緯があり、第2次支援を実施しても財政再建が進む保証はないとの不信感が広がっている。
EU、IMFは2010年5月に1100億ユーロの第1次支援の実施を決めて以来、公務員数の削減、公務員の賃金・年金削減、国有企業の民営化、増税・徴税強化などの緊縮策を要求してきた。
ギリシャ政府は/(1)/15年までに公務員15万人削減/(2)/国有企業売却で500億ユーロ調達/(3)/86億ユーロの追徴課税-などを約束。しかし、いずれも実現しなかったり、計画に大幅な遅れが出たりしている。
改革が停滞する間も経済の落ち込みは続き、財政を再建軌道に乗せるのに必要な支援額は膨れ上がった。EU内では第2次支援をめぐり、支援資金の一部を厳しい条件の特別勘定で管理し、同国債務の利払いに充てさせる案も検討されている。
(N.B.)ギリシャ債務問題 ギリシャでは2009年秋の政権交代をきっかけに、政府債務の過少計上が発覚。欧州全体に及ぶ債務危機の発端となった。欧州連合(EU)や国際通貨基金(IMF)は10年5月、1100億ユーロ(約11兆円)の第1次支援で合意したが、財政再建を軌道に乗せられず、11年7月に1090億ユーロの第2次支援を決定。同年10月には支援額を1300億ユーロに引き上げた上で、銀行など民間債権者に対し、保有するギリシャ国債元本の半分の放棄を要請した。