安全網の早期出資で合意 財政不安国の支援 独仏首脳会談
2012.01.10 朝日東京朝刊 3頁 3総合
メルケル独首相とサルコジ仏大統領は9日、ベルリンで今年初めてとなる首脳会談を開いた。財政不安の国を助ける安全網について、各国が出す資本を早めに積み上げる方向で合意した。ただ、政府債務(借金)危機への対応策では大きな進展はなかった。
ユーロ圏は財政不安の国を助けるため、欧州金融安定化基金(EFSF)を運用し、後継組織となる欧州安定メカニズム(ESM)を今年半ばまでに設ける準備をしている。両者を合わせた支援規模は5千億ユーロ(約49兆円)で、ESMへの資本は各国が段階的に出すことになっている。
この日の会談では「我々の信用とユーロ圏への支援を見せるため」(メルケル氏)として、資本の積み上げをなるべく早くすることを他国と調整する方針で合意した。しかし、市場が求める5千億ユーロからの規模拡大までは示されなかった。
一方、財政規律の強化策も協議。先月の欧州連合(EU)サミットで決めた各国の財政規律の強化策では、英国を除くEU26カ国で政府間協定を結ぶことになっている。サルコジ氏は「近日中に交渉を終え、3月1日には各国が署名できることを望む」と述べた。
両首脳は、域内の成長戦略についても話し合った。政府債務を減らす中でも経済の刺激策を実施し、雇用を確保することが重要との認識で一致した。
金融機関の投機的な取引を抑えるといった目的のため、金融機関の株などの取引に低率の税金をかける金融取引税については、サルコジ氏が来月にも他国に先行して導入する意向を示している。メルケル氏は導入に賛成で、英国などの反対でEU全体が難しければ、ユーロ圏だけで導入する可能性もあると述べた。
両首脳は幅広いテーマを話し合ったが、現段階では、市場を安心させるような具体策にはまだ乏しい。
市場では、1~3月にかけて欧州各国の国債は大量の借り換えが必要になるが、イタリアやスペインは今週の入札で十分買い手がつかないのではないか、と不安視される。さらに米格付け会社は近くドイツやフランスを含めたユーロ圏15カ国を対象に国債の格下げを検討中。実際に格下げされれば、市場環境が一層悪化する可能性が高い。
今後、11日にメルケル首相とイタリアのモンティ首相の会談を経て、20日に独仏伊の首脳がローマで会談する予定。30日のEUサミットまでに、危機対応策でさらに進展を見せられるか注目される。