書評「蒸気機関車の記憶」/原京一
この写真集は、測光の難しい夜間の鉄道写真を纏めたカラー写真集である。著者の原京一は、1998年没で、晴子未亡人らによって編集されたため、撮影場所等のデータが不正確(例:p.63の写真は宮古のラサ工業専用線であるのに拘わらず「会津線」のような記載がある)である欠陥はあるが、夜間撮影のデリケートな、絞って長時間露光する相反則性不規のための露光補正を行っており、輝度測定の極めて困難な条件下で美しい写真に仕上がっている。同氏はSLブームの頃「夜間も楽しく」(キネマ旬報社刊『蒸気機関車』掲載)等の表題でモノクロームの夜間撮影を美しい仕上で発表し、SL夜間撮影の妙味とそのプリントの仕上げを公開していたが、カラー写真の纏まった夜間撮影写真を主に写真集を公開したのは2011年3月4日の草思社刊「蒸気機関車の記憶」/原京一が初めてである。
美しい写真で、現在では「低感度」の135判・120判カラーポジフィルムによって、絞り込まれているレンズに「長時間露光(1分から5分)」されて作画された技法は、卓越し、同氏の独壇場であった。
この写真を繙くと、私自身も「平機関区」(現いわき駅)で、C62,C60,C61を、下りの蒸気機関車C62牽引の特急「ゆうづる」の発車(0:43発)、同蒸気牽引の急行列車「おいらせ」(1:49発)の発車まで撮影し続け、三脚を立てて長時間露光した頃を思い出す。ただ「背景の黒」を「印画紙上の黒」として作画するのに暗室で何回も焼き直し、「作画」するのに「苦労」を重ねたことを思い出します。
夜間の蒸気機関車は美しい!
この写真集を手にすると青春が蘇ってきます。
(八木橋正雄)
Photo; 遊学先のグルノーブル駅にて(責任MasaoYAGIHASHI: Locomotive 141R)