現代ギリシア人名の音引表記は、現代語の音声の表層形で書記する必要があります。古典ギリシア語のエラスムス式の音引表記と混同している者が多いです。たとえば「イョールゴス・セオトカース」は古典式音韻の深層式表記で、表層形は「ヨルゴス・セオトカス」です。有名なギリシア人画家でスペインで活躍した「エル・グレコ」の表層形は「セオトコープロス」です。深層形の二重母音のエラスムス式の表層形「セオトコプーロス」は間違いです。美術史の教科書も歴史の教科書も後者で表記しています。現代ギリシア語の音声学を知らない者の間違いです。関本至教授も「現代ギリシア文学選集」で各著者の人名の表記を古典ギリシア語のエラスムス式の深層形を基礎に記述しておられます。これらも明らか誤です。古典ギリシア語の二重母音であっても現代語では「長音」にはなりません。「音引き」で「-」にすることは誤りです。古典ギリシア語のエラスムス式発音は「学習」には必要ですが、中世・現代の語彙にこれをあてがっていてはいけません。現代ギリシア人のネーティヴ・スピーカーの発音に倣うべきです。「ギョエテとは誰のことなりき?」という昔の語学者の錯誤(「ゲーテ」の錯誤読み)を繰り返すことになります。
現代ギリシア語式に古典ギリシア語を読むことには、現代人の伝承と伝統を受け継ぐことです。私h